有機材料の低損傷エッチング

2014.08.15 UpdateTOPICS

ガスクラスターイオンビームについて

有機材料の低損傷エッチング

Low Damage sputter etching of organic materials

ポリイミドは、その優れた耐熱性、耐化学薬品性などの特徴から フレキシブル基板などの電子材料、液晶表示材料、半導体の絶縁膜など広く工業的に用いられています。しかし、PMDA-ODAタイプのポリイミドは、既存の炭素クラスターイオンではエッチングができず、実用的な分析が実現していませんでした。

図1~3にSi上に100 nmの膜厚で成膜したポリイミドを10kVC60および2.5kV Ar GCIBでスパッタエッチングした時のXPSデプスプロファイルとスペクトル変化を比較して示します。ガスクラスターイオンの利用によって、100 nmのポリイミド膜がエッチングでき、XPSによる定量値は本来の化学組成に近い値が得られている(図1)ことがわかります。また、C60の場合にはスパッタ後に化学状態が変化しています(図2)が、ガスクラスターイオンの場合にはスパッタ後も化学状態が変化していない(図3)ことがわかります1)

これまでに、ガスクラスターではC60などの炭素系クラスターで比較的苦手とされていた有機材料についても、容易に化学状態の変化しない深さ方向分析ができること、いったん出来たダメージ層の除去が可能であること2)、数十ミクロンに及ぶ深いスパッタエッチングができることが示されています。

図1 PMDA-ODA薄膜を10 kV C60 および 2.5 kV Ar GCIBでスパッタエッチングした時のXPSデプスプロファイル

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図2 PMDA-ODA薄膜を10 kV C60でスパッタエッチングした時のXPSスペクトル変化

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図3 PMDA-ODA薄膜を2.5 kV Ar GCIBでスパッタエッチングした時のXPSスペクトル変化

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