イベントレポート:第33回 アルバック・ファイ 技術講演会

2016.09.16 Update

イベントレポート:第33回 アルバック・ファイ 技術講演会

6月1日(水)建築会館(東京/田町)にて、当社主催の技術講演会を開催いたしました。
本年もたくさんのお客様にご来場いただきました。満席となった会場では、多くのご参加者が熱心にメモを取りながら講演に聞き入り、質疑応答も積極的に交わされるなど、盛況の内に終了いたしました。
それでは、当日の様子をレポートいたします。


午前中は、アルバック・ファイから2件の発表を行いました。

「新製品・新技術のご紹介」

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当社技術開発部 渡邉 勝巳より、新製品・新技術の紹介と題して、XPSでのマイクロ分析と広域分析においてさらなる高感度化を実現した ”PHI 5000 VersaProbe III”、XPSのマイクロ分析では困難なサブミクロン領域の化学状態分析に優れたオージェ電子分光分析装置の ”PHI 4800”。続いて、従来のXPSにはない特徴を有するラボ型硬X線光電子分光装置 ”PHI Quantes” について、それぞれの実データを示しながら詳しく紹介いたしました。

「パラレルイメージング MS/MS を用いた最新の応用事例」

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当社分析室 飯田 真一からは、現在開発中の当社TOF-SIMS装置用の最新オプション ”MS/MS” についてお話しました。これまで難解とされてきたTOF-SIMSにおけるスペクトル解析ですが、”MS/MS” オプションを用いることで、化学構造に関する情報取得やピーク同定が容易になります。今回は、材料の帰属も可能になる応用例を含めてご紹介いたしました。


続いて午後からは、各方面でご活躍されている先生方より、表面分析の発展の歴史や現在の評価技術の実例、更に最新の研究成果まで、幅広く興味深い内容をお話しいただきました。

今回の講演をご快諾下さった4名の先生方に改めて深く御礼申し上げます。

帯電緩和の歴史とそのメカニズム

「実用材料の表面分析との関わりの中で感じた想いと今後への期待」

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株式会社 三井化学分析センター 塩沢 一成 様

三井化学分析センター 塩沢様からは、X線光電子分光法における非単色化X線源から単色化X線源への推移の歴史と、それに伴う試料の不均一帯電とその緩和法についてお話いただきました。

集光型の単色化X線源では、試料ダメージは低減されるもののスポット照射特有の不均一な帯電が生じるため、その緩和には負電荷供給だけでは不十分であり、正電荷(アルゴンイオン)を付与することで解消されることを、ご自身の分析経験を交えてご紹介いただきました。

また、Lab用 HAXPESにおける帯電緩和についてもご期待を寄せていただくなど、装置の基本に戻って帯電緩和のメカニズムについて改めて考えさせられるご講演でした。

適切な装置選択と高精度評価の実現

「コベルコ科研における光電子分光法の活用と展望」

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株式会社 コベルコ科研 稲葉 雅之 様

「発展する技術に追随し、適切な活用方法を検討することで、常に顧客要求にベストマッチの課題解決方法を提案していきたい」と話す、コベルコ科研の稲葉様からは、電池材料の評価事例についてご紹介いただきました。

大気非暴露により試料の変質を低減させた表面皮膜の定性分析、ガスクラスターイオン銃(GCIB)による有機成分の変質を抑えた深さ方向分析、HAXPESによる正極活物質の非破壊での価数評価及びSi負極の詳細解析など、材料や目的に応じて適切な手法を選択することがいかに重要かという観点でお話しいただきました。

ワンストップで高精度な評価を行うことで、時代の変化とお客様のニーズに応えるという大変興味深いご講演でした。

分子レベルで界面構造を制御する

「有機半導体薄膜の表面・界面構造制御と有機電子デバイスへの応用」

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国立研究開発法人 理化学研究所 但馬 敬介 様

理研CEMS・JSTさきがけの但馬様からは、近年多方面に応用されている有機半導体デバイスについて、最新の研究成果をご紹介頂きました。

求められる特性を満たすためには、界面の構造を精密に制御することが非常に重要であることを背景としてお話頂いたあとで、分子配向を制御した単分子膜の機能表面を界面に取り付ける画期的な手法をご紹介頂きました。また、作成した薄膜の評価方法として、XPSの角度分解測定による極表面の深さ方向濃度分布評価、UPSによるイオン化ポテンシャルの計測など、有機デバイス材料に対する表面分析の応用例をご紹介頂きました。

表面分析装置によって分子レベルで制御された界面構造の評価を行うという、大変興味深いご講演でした。

実動作環境下へ展開される表面分析

「オペランド表面ナノキャラクタリゼーションの系譜と展望
 ~グラフェンから次世代電池まで~」

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国立研究開発法人 物質・材料研究機構 藤田 大介 様

近年、デバイスなどを動作状態のままで計測する"オペランド計測"が注目を浴びる中、ナノキャラクタリゼーションのための計測技術の開発と普及を長年リードされてきた物質・材料研究機構の藤田様から、表面分析のオペランド計測への展開についてお話をいただきました。

導入として、加熱環境下でグラフェンが金属膜表面に生成する過程をXPSでとらえた例を、続いて、走査型プローブ顕微鏡を用いて、次世代型太陽電池の状態密度分布を観察した例や、リチウム電池電極の電位分布を充電状態と放電状態で比較した例を紹介いただきました。

表面分析の新たな方向性を指し示していただいたご講演でした。


 

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