イベントレポート:第32回 アルバック・ファイ 技術講演会

2015.07.09 Update

多岐にわたる講演内容とともに、表面分析の最新技術をお伝えします!

イベントレポート:第32回 アルバック・ファイ 技術講演会

2015年6月3日、東京・建築会館にて、第32回 アルバック・ファイ技術講演会を開催いたしました。

当日はあいにくの雨にも関わらず多くの皆様にご参加いただき、会場はほぼ満席の盛況ぶりでした。
足元の悪い中、ご来場いただき誠にありがとうございました。

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午前中は、当社より現在開発中の最新技術・装置について実際の基礎データを交え、ご報告いたしました。


アルバック・ファイより

「硬X線光電子分光分析の開発紹介 -最新の基礎的なデータを中心に-」

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アルバック・ファイ株式会社 分析室
井上 りさよ

今回は、アルバック・ファイが開発を行っている CrKα線を用いた時の基礎データについて紹介しました。なお本講演は、内容の一部に 東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクスセンター様との共同研究の成果を含めてお話しいたしました。今後は絶縁物の評価や定量分析など、より身近な分析事例をご紹介していく予定です。

「New Capabilities Under Development for the PHI nanoTOF II」

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Physical Electronics USA, Inc.
Dr. Scott Bryan

米国 Physical Electronics社 社長のScott Bryanより、最新のTOF-SIMS開発状況をご報告いたしました。

クラスターイオン技術の発展により有機材料評価のニーズが益々高まる中、既存のTOF-SIMSでは達成できない正確な3次元分布観察の実現を目指したFIB-TOFの話題を中心として、TOF-SIMS開発の最新動向を紹介すると共に、今後の方向性を議論させていただきました。


続いて午後からは、表面分析だけに留まらない多岐に渡る内容で4名の先生にご講演をいただきました。

まずは、企業でご活躍されている 大日本印刷 藤村氏、巴川製紙所 小渕氏より、企業における研究開発との関わりと実用的な応用技術についてそれぞれ詳しくお話しいただきました。
また、基礎的研究という観点から、韓国KRISS Kim氏から国際標準化について、物質・材料研究機構 吉川氏から X線光電子分光分析の実用と今後の展望についてご講演いただきました。 


ものづくりの在り方とは?分析とは?

「企業における研究開発と分析技術との関わりあい」

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大日本印刷株式会社 研究開発センター
藤村 秀夫 氏 

1876年の創業から今年で139年目を迎えると話す藤村氏からは、印刷業から始まった会社が現在に至るまでの事業の変化と、それに関わる分析・評価技術の変遷についてお話いただきました。

分析は不良品解析やクレーム分析をするだけではなく、何をすべきかの指針を与えることが求められており、これからの時代は分析がものづくりの在り方を決めるとの力強いお言葉が印象に残りました。

さらには人の感性を評価・解析するという非常に困難な問題にもチャレンジされていて、分析とは何かを考えさせられるご講演でした。

質の高い原因分析のために

「製品異物への分析アプローチ」

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株式会社巴川製紙所 巴川分析センター
小渕 秀澄 氏

自社製品の品質管理や研究開発を通じて分析技術を蓄積してきたと話す小渕氏からは、異物分析の進め方と各種分析手法を用いた原因分析事例についてご紹介いただきました。

異物分析は、光学顕微鏡やSEMなどによる異物そのものの観察に始まり、マイクロダイセクションや断面切削などの適切な試料前処理を経た上で、ふさわしい化学分析手法が決まるとのお話でした。またSEM-EDXやXPSなどの表面分析をはじめ、LCやGCなど様々な分析技術を併用することで原因が特定できるとのご説明いただきました。

状況に応じたふさわしい分析手法を用い、正しく結論に導けるよう考えることこそが質の高い分析を実現できる要因であると実感したご講演でした。

XPS産業利用のための国際標準化

「Practical Applications of XPS for Industrial Metrology」

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韓国標準科学研究院 (KRISS)
Dr. Kyung Joong Kim

「XPSの産業利用には信頼性が重要です」というKim氏は、XPS分析結果の信頼性を担保するための3本柱として、1.トレーサビリティ(国際度量衡委員会CIPMによる国際比較 Key Comparison)、2.測定解析手順の標準化(ISO標準)、3.認証標準物質 を挙げ、それぞれについてSi基板上のSiO2薄膜の厚さ評価を例に詳しくお話しいただきました。

また昨年、国際度量衡委員会(CIPM)による国際比較として実施されたCIGS薄膜太陽電池の深さ方向組成分析に関して、韓国KRISSから PHI VersaProbe IIを用いて測定したデータが提出されたことを含めてご紹介いただきました。

シリコン太陽電池に代わる新たな材料として注目されるCIGSの話には多くの質問が寄せられ、XPSの産業利用への期待が感じられるご講演でした。

材料特性評価を担う新たなXPSとして

「硬X線光電子分光の実用と展望」

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国立研究開発法人 物質・材料研究機構
極限計測ユニット 表面化学分析グループ
吉川 英樹 氏

XPSでは、分析対象の材料特性とデータとの相関が容易に説明できることが最も望まれる事です。これを難しくしている最大の原因は、実用試料における大気中で変質した表面層の複雑な組成や構造です」と話す吉川氏からは、これらを解決する有効なアプローチとして硬X線光電子分光法による分析事例をご紹介いただきました。

表面コンタミの影響やオージェピークの干渉を受けることなく、非破壊でその場観察できるという特徴を生かし半導体のバンド曲がりやナノ粒子内包デンドリマーなど、広い意味で内部構造を持つ試料を観察した実証例についてご紹介いただきました。

今まで得られなかった領域の情報が取得できる有効な分析手段であることが、会場の活発な質問からも伺え、新たなXPSへの期待が感じられました。

(レポート作成:アルバック・ファイ株式会社)

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2015年 技術講演会(当社発表分のみ掲載)